無断での撮影や公開、利用、販売を防ぐ権利
肖像に関する種類と利用範囲
肖像権は、他人の顔や容姿などの個人的な特徴を写真や映像などに撮影する場合に関係する法的な概念です。権利の種類や利用可能な範囲など、企業として動画等を発信していく際に担当者が把握しておくべき内容になります。必ず事前に確認してください。
レッスン
動画でイメージを確認する
肖像権とは
肖像権はプライバシー権(人格)とパブリシティ権(財産)の2つで構成されており、それぞれ守られている権利が異なります。
肖像権 | 肖像権は、「他人に無断で写真・動画を撮影されたり、その写真・動画を公開されたりすることから守られるための権利」になります。 |
プライバシー権 | プライバシー権とは、「自分の私生活をみだりに公開されることから守られるための権利」になります。SNSで無許可で公開された場合は、権利の侵害となる可能性があります。一般人であれば、誰でも所有している権利です。 |
パブリシティ権 | パブリシティ権とは、「著名人がもつ経済的な利益や価値を財産と考え、その財産を独占的に利用する権利」になります。例えば、芸能人などをCMに起用することで、売上や集客力をアップさせることができるため、勝手に芸能人の写真などを使用することはできません。 ・著名人の写真などを集めて販売すること。 ・著名人が愛好者のようにパッケージで使用すること。 ・商品名に著名人の名前をそのまま使用すること。 |
SNSにおける肖像権
InstagramやTikTokをはじめ、ネット上に画像や映像などをアップして、コミュニティーを楽しむ一方で、映り込んだ人から無断で掲載されたことに対するトラブルも増加しています。
SNS上での誹謗中傷への対策に関する取組みの大枠について(総務省より)
X | Xはリポスト機能があるため、他のSNSに比べると拡散力が強くなります。そのため、一度掲載してしまうと瞬く間に拡散してしまうため、写真や動画をアップする際は、特に注意が必要です。 |
Instagramのコンテンツは主に画像になるため、人が映り込んでいる画像をアップしたい場合は、事前に承認をもらう必要があります。ただし、風景の一部として映り込んだり、リポスト機能で本人だと特定できない場合は、侵害とならない可能性があります。人が映り込んだ画像や映像がすべてNGになるわけではありません。 | |
YouTube | YouTubeでは、外で行われる撮影で思わぬ映り込みが発生します。個人であることが特定できる場合は、肖像権の侵害になる可能性がありますが、駅や公園など、人が大勢いる場所で、背景の一部として映り込んだ場合は、侵害になりにくいとされています。 |
TikTok | YouTubeよりも個人に焦点を当てた撮影が多くされるため、映り込む可能性は低くなりますが、気づかないうちに撮影をしてしまうことがあります。気軽にアップロードができるため、アップする前にしっかりと確認しておきましょう。 |
肖像権の判断基準
実は、肖像権の侵害の基準は、法律では規定されておりません。これまでの判例をもとに、違法性が認められたケースを参考にして、撮影や編集を行なってください。
被写体の特定 | 撮影した画像や映像の中で、個人が特定できる場合は肖像権の侵害になる可能性が高くなります。ただし、被写体の一部であったり、映像がぼやけている場合は、侵害に該当しない可能性があります。また、人混みの中で偶然映り込んだり、特定の被写体を狙ったわけではない場合も、侵害に該当しない場合が多くなっています。 |
許可の有無 | 映り込んだ人物に対して、撮影の許可を得ていれば、肖像権の侵害にはなりません。ただし、SNSにアップする場合は、撮影とSNSの両方の確認をしておくと間違いありません。 |
どこで撮影したのか | 画像や映像を撮影する場合に、プライベートサロンや隠れ家のようなレストランから、コンサートのような大人数の場所があります。他人が映り込む可能性が高い場所での撮影では、肖像権の侵害になりにくい可能性があります。しかし、大人数の中で、特定の人物だけを撮影していた場合は、侵害の可能性が高くなります。 |
動画の公開先 | SNSに公開することで、不特定多数の人々に個人の情報や内容が知れ渡ることになります。知られたくないことが知られた苦痛や苦悩は計り知れません。投稿をアップする場合は、細心の注意を払うようにして下さい。 |
社会生活上、受任の限度を超えていないか | 人の肖像権を無断で使用する行為が不法行為上違法となるかどうかは、対象者の社会的地位や、当該使用の目的、態様及び必要性等を総合考慮し、対象者の上記人格的利益の侵害が社会生活上受忍の限度を超えるものといえるかどうかを判断して決すべきである (令和2年6月26日 東京地裁 事件番号 平31(ワ)8945号) |
つまり、肖像権を侵害されたと感じた側が生活する上で耐えきれないほどの苦痛を感じている内容であれば、肖像権の侵害とみなすと裁判所が判決したことになります。
損害賠償の例
過去の判例から、どれぐらいの損害賠償になったのかをご紹介します。今回ご紹介した内容は、肖像権に関するすべてを保証しているわけではありません。判断に迷った場合は、法律事務所などの専門家に直接相談するようにしてください。
内容 | 金額 |
---|---|
プライバシーの権利・肖像権の侵害 | 10万〜50万 |
ネット・SNS上の誹謗中傷 | 10万〜50万 |
事業の使用失墜・営業への支障 | 50万〜100万 |
まとめ
肖像権は、他人の顔や容姿などの個人的な特徴を写真や映像などに撮影する場合に関係する法的な概念です。以下に肖像権に関する注意点をいくつかご紹介します。
許可を得る | 他人の顔や特徴を撮影し、それを公に利用する場合は、撮影対象の明示的な許可を得る必要があります。特に商業目的の撮影や広告においては、許可を得ることが重要です。 |
プライバシーを尊重する | 肖像権は、個人のプライバシーを保護するためのものです。他人の私生活や個人情報を撮影する際は、プライバシーに対する配慮が求められます。一般的に公共の場での撮影は問題ないことが多いですが、人々がプライバシーを期待する場所や状況では慎重に行動しましょう。 |
有名人や著名人には特に注意 | 有名人や著名人の肖像権は一般的に厳格に保護されています。彼らの肖像を商業目的で使用する場合は、特に慎重になる必要があります。許可を得るか、公共の場で撮影した場合でもプライバシーを尊重することが重要です。 |
グループ写真やイベントの撮影 | 肖像権は、個人の肖像だけでなく、複数人が写っている場合にも関係します。グループ写真やイベントの撮影では、全員が了承していることを確認しましょう。特に商業目的で使用する場合は、個々の了承を得ることが重要です。 |
既存の写真や映像の使用にも注意 | 他人の肖像を含む既存の写真や映像を使用する場合も、肖像権に関する法的な制約が存在する場合があります。許可を得るか、著作権や肖像権の関連法規に従うことが重要です。 |
屋外で撮影した映像や画像をSNSなどに投稿する場合は、今一度他の人が映り込んでいないかを確認するようにしてください。万一映り込んでいる場合は、モザイクなどの編集により、回避するようにすると問題ありません。きちんとルールを把握して、イメージ通りの作品に仕上げていきましょう。
お知らせ
CEVSTYでは、スタッフが撮影したり編集ができるための研修サービスを用意しています。スタッフが広報力を身につけることで、訴求力のある情報を発信することができ、良好なイメージを構築・維持することができるようになります。
現在提供しているサービスについては、企業の状況に合わせてオーダーメイドで研修を組み立てるため、年間でのご契約に限りがございます。ご興味があるご担当者様は取り急ぎ、お問い合わせ等をしていただけると幸いです。