USPとは、Unique Selling Propositionの頭文字になり、自社の商品やサービスが持つ独自の強みになります。アメリカのコピーライターであるロッサー・リーブスによって提唱されました。USPはマーケティング戦略の一つですが、ここでは、USPシンキングによって、中小企業が大手企業に勝つためのヒントをご紹介します。これからビジネスを始める方やすでに始めていて思うように実績が出ていな方は、ぜひ参考にしていただけると幸いです。それでは、どうぞ!
USPシンキングの目的
多くの開発者や生産者は「良いものは売れる」と思っています。それは、消費者が「良いもの」を価値として持っていると思い込んでいるからです。「良いもの」とは何でしょうか?果物であれば「甘い」ことであり、鉄であれば「固くて錆びない」ことです。
しかし、消費者の価値観は多様化しています。本物思考の人は「質」にこだわりますが、実際の消費者が「質」が分かって購入しているわけではありません。本物の質を分かる人は熟練した名人にしか判断できないからです。日本の格付けランキングの番組で、芸能人が高級なお肉やワイン、数億円の楽器を判断できていないことでも、「質」について分かる人は一握りの人たちだけなのです。
インターネットがない時代は、消費者はテレビや雑誌などのマスメディアによって情報を知り、実際に店頭へ行って並んでいる商品の中から選び、そこにいるプロの店員さんのアドバイスによってベストな選択をすることができていました。
しかし、WebやSNSが登場したことにより、類似商品をスマートフォンで比較できたり、送料も無料になるため、店頭には行かなくなる消費行動へ変化したのです。消費者の選択肢が広がったように見えますが、消費者はどれが自分にとってベストな選択なのかを決めることができなくなってしまいました。そこで、戦略的に用いられたのが、プロが制作したコンテンツであるPGCやユーザーが制作したUGCになります。消費者の購買基準がこれらの情報に左右することが判明したため、企業側は影響力のあるインフルエンサーに広告費を支払って宣伝してもらう流れになったわけです。
多様化した価値と情報量が多くなった世界で、自分たちの商品やサービスを端的に消費者へ理解してもらうために必要なのが、USPシンキングになります。
USPシンキングとは
USPシンキングの基本は下記になります。
- Unique(ユニーク)=独自
- Selling(セリング)=特長
- Proposition(プロポジション)=提案
ドミノピザの例
無名だったドミノピザが日本に上陸した際のUPSが、「熱々でジューシーな美味しいピザをお宅まで30分以内にお届けします。間に合わなければ、代金は頂きません」というものでした。
Unique(ユニーク)=間に合わなければ代金はいただきません。
Selling(セリング)=お宅まで30分以内にお届け
Proposition(プロポジション)=熱々でジューシーな美味しいビザ
ドミノピザ以外にも他の宅配ピザは多く存在していましたが、UPSを活用することで、新規客にインパクトを与えることができ、瞬く間に店舗を拡大していきました。ターゲットに合わせたニーズに対して独自のセールスポイントを提示できれば、差別化を図ることが可能です。つまり、中身を変えなくても、言い方や伝え方を変えることで、訴求効果を高めることが可能になります。また、独自性はクオリティだけではありません。価格・場所・速さ・手軽さなども差別化を図ることができます。
つまり、幅広い消費者に当てはまる内容は大手企業が得意とすることであり、すぐに勝利することはできません。中小企業にできて大手企業が真似できないことをUSP化することが重要になります。
大手ができないこと
大手企業が得意とするのは、大量消費大量販売であり、その努力により価格を抑えることができていることです。大量に生産するためには条件があります。
- 工程が少ないこと
- 手に入れやすい素材
- 時間が短いこと
- 機械化しやすいこと
- 仕組み化しやすいこと
これらの条件が合わないものは、コストがかかるためやりたがりません。つまり、大手企業の商品やサービスは誰にでも当てはまる一方で、個別対応が苦手になるわけです。中小企業は個別対応を軸にした商品やサービスを企画開発することが必要です。そのために最も重要なのは、消費者の価値(悩みや期待)をどれだけキャッチして、顧客設定をして、その顧客が喜ぶ商品やサービスを開発していくのかということです。
USPの作り方
どのようなお客様に対して、どのような商品やサービスを提供し、お客様にどのようになって欲しいのか?
3つの「どのような」をシンプルに軸としてまとめてください。お客様のセグメントは年齢・性別・住まい・職業などターゲット分類やさらに細かい人物像であるペルソナ設定ができるのであれば、ペルソナの方が具体的なイメージを持ちながら議論することができます。
商品やサービスについてはどのような特徴があるのかを徹底的に調査してください。類似品がないのか、価格帯はいくらかなどの調査や研究が重要になります。その中でナンバーワンではなく、オンリーワンの差別化ワードを見つけてください。差別化ワードが響く顧客が誰なのかも再び議論していきます。
最後の「どのような」は、商品やサービスを購入することで顧客の生活や人生が、どのように変化し豊かになるのかイメージさせる言葉になります。まずは思いつく言葉を集めていきながら、言葉を組み合わせていきます。
言葉を選ぶ際は、パワーワードやトレンドワードなども威力を発揮します。専門用語よりも一般用語を使用し、数値化できる内容はなるべく数字を入れるようにしましょう。「たくさん」や「多くの」と表現するよりも「3ヶ月」や「1万人以上」と表記する方が、インパクトを与え、記憶に残りやすくなります。
まとめ
USP的思考を企画開発者と広報担当者が社内にいることで、これからの時代がどのように流れていっても対応することができる企業として生き残ることができます。すでにある商品やサービスのネーミングを変えるだけでも売り上げが倍増したりするケースは国内外に多数あります。その当時は売れなかったものが、現在では需要が開花しているかもしれません。
SNSでは自分たちで情報を発信することもできますが、視聴者として再生数が多い投稿や動画を判断することができます。そのような投稿や動画を研究することで、ある仮説が浮かび上がります。「ここには需要があるのでは?」そう思ったら、自分たちで動画や記事を投稿して、反応を見ていきましょう。反応が大きければ確実にチャンスがあります。